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Discovery Chemistry―研究開発を変革する

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データ分析や機械学習などの高度なデジタルイノベーションが、製薬・化学業界の科学の進歩を加速する方法とは

デジタルイノベーションが人の経験するほぼすべての側面を変化させる時代において、製薬・化学業界はそれを円滑に順応・導入・進化できる場合にのみ、業界をリードできるという特殊な立場にあります。

MITとPerkinElmer Informaticsによるこの資料では、Novartis社・Merck社・Janssen社などの優れた経営陣の洞察とともに、これらの業界で成功するための重要な4つの検討事項・戦略・戦術について概説しています。

デジタルイノベーションを加速させる要素を探る

デジタル化は、科学的発見とその開発競争において有意な位置に立つための重要な要素

革新的な成功を収めた最近のケーススタディでは、デジタル技術の力が証明されました。大規模なデータセット・ゲノムシーケンス・計算パラダイムなどの進歩により、新しい製剤・医薬品のデザイン方法から、試験・治験・製造方法まで、研究開発過程のあらゆるステップが根本的に変化しました。

いくつかのプッシュ要因とプル要因により、革新をもたらす全く新しい方法が必要とされています。二酸化炭素排出量の削減や動物実験の廃止などの社会的な圧力が高まると、一部の業界ではより厳格な枠組みが導入されます。これらのケースでは、コンピュータモデリングや細胞試験というより人道的な代替手段でありながら、動物実験と同等かそれ以上の精度でできる可能性があります。

反対に、競争圧力が高まると、大手のテック企業が、「莫大な資金・データ・専門知識」を投入して、「以前は参入障壁が高かった分野への進出が可能になり」、他の企業との競合が始まる、とBASF社のR&D デジタライゼーション バイスプレジデントのリチャード トレザウェイ(Richard Trethewey)氏は述べています。同時に、資金力のある多くの新興テック企業がこれらの分野に参入し始めています。

そして、臨床試験プロセスも全面的に見直す時期が来ています。新薬を上市するために必要な巨額の資金(平均20億ドル)のうち、50%が臨床試験に費やされています。

より良い科学を目指して

科学を基礎とする大手企業は、エグゼクティブスポンサーシップと大規模なインフラ投資で、デジタルトランスフォーメーションに巨額の資金を投入

デジタル時代は社会のあらゆる面に影響を及ぼしていますが、新しいツールや 研究手法は、特に医薬・化学分野のイノベーターに素晴らしい可能性をもたらしています。

 

 

臨床試験の最適化

上述のとおり、臨床試験分野には、デジタルイノベーションによる成長が見込まれる大きなアンメットニーズが存在します。
予測やモデリングなどのドライラボの科学では、探索段階に費やす時間を最小限に抑えることで、臨床試験の対象の質を改善します。そうすることで分子を「フェイルファスト(早く失敗)」でき、研究者の試行錯誤に頼る必要がなくなります。これらの技術は、設計プロトコルを最適化し、有効性に関するより良いデータを生成することで、実際の実験の質も改善できます。

「デジタルイノベーションによって正しい研究をより早く開始できれば、時間も費用も削減できます」
– Syngenta社クロッププロテクションR&Dデジタルイノベーション代表 マーティン クラフ(Martin Clough)氏

プレシジョン メディシンの実現
デジタルバイオマーカーは、すでに医療情報の取得や患者様のリアル
タイムの治療に利用されています。「多発性硬化症などの病気の場合、
有害事象を発症する傾向のある患者様が分かるため、ステロイド投与など
の介入時期の情報を得られます」と、Janssen Pharmaceutical社シニア
ディレクター兼ビジネステクノロジーリーダーのアンソニー ロー
(Anthony Rowe)氏は述べています。

さらに、ゲノムシーケンス技術の急速な発展や、データマッピングへの
取り組みに、コスト低下があいまって、ヒト生物学に基づいた治療の
設計が可能になりつつあります。「堅牢なヒトの生物学的特性データに
根ざした治療標的であれば、成功する可能性は非常に高まります」と、Eisai Center for Genetics Guided Dementia Discovery所長のナディーム サルワル(Nadeem Sarwar)氏は述べています。これらのバイオマーカーも、がんの免疫療法などの分野において、新たな治療法の開発に役立っています。

 

質の高いデータの取得
医薬品・化学製品開発の各段階、特に製品試験や臨床試験において、質の高いデータを確保することは極めて重要です。集団レベルでは、データの保存方法によって、電子診療記録・請求データ・疾病登録を幅広く活用する可能性が広がります。個人レベルでは、ハイテクなウェアラブルデバイス・埋め込みデバイスのほか、消化可能なものも登場し、患者様の自己申告ではなく、客観的なスコアが得られることで治験プロセスを改善できます。

これらの新技術は、より高品質のデータを取得するだけでなく、治験参加へのプレッシャーを軽減し、治験デザインの多様化に対応できる分散型臨床試験につながる可能性を秘めています。分散型臨床試験では、相互協力が促されることで、最終的により質の高い知見が得られます。さらに、治験デザインの多様性が高まり、ゲノムデータによってこれまで重視されてこなかった集団に焦点を合わせられます。

「これまで医療サービスが不十分だった集団の特定と、治療法の発見に特に有益と思われる新たな遺伝的関連性の特定を求める声が高まっています」
– Eisai Center for Genetics Guided Dementia Discovery所長 ナディーム サルワル

 

 

新素材・複合材の開発

化学業界は、銀行や製薬などの業界よりも遙かに早くデジタルトランスフォーメーションの恩恵を受ける態勢を整えています。デジタルイノベーションにより、すでにバイオシルクから、高効率バッテリー、植物性ハンバーガーまで、かつてないほど進化した創造的な手段で作られた新しい種類の素材が登場しています。「デジタル化によって、材料の特性や活性分子の性能、毒物学的影響をより正確に予測できます」と、トレザウェイ氏は述べています。

戦略とベストプラクティスの実行

高性能な研究開発には、堅牢なデータガバナンスが不可欠

科学技術は、他との関わりなしに存在することはできません。人工知能(AI)と機械学習、モノのインターネット(IoT)、クライオ電子顕微鏡などの技術は、すべて変革をもたらす可能性を秘めていますが、これらを完全に実現するためには適切に活用することが必要です。専門家はトップダウンで焦点をあて、草の根レベルで投資を行い、従業員がイノベーションを追求することに報酬を与え、奨励することです。その目標は?革命よりも進化です。

では、リーダーはどのようにしてデジタルイノベーションの導入を成功させればよいのでしょうか?第一に、その導入を奨励することです。イノベーションに報酬を与えて奨励することで、貢献者が個人レベルで興味を抱くようにします。「当社では、イノベーションを報奨し、イノベーションに対する意識を高め、コンセプトの実証を通じてイノベーションを推進しています」と、クラフ氏は述べています。

イノベーションを支援するもうひとつの重要な方法は、支えとなるインフラを構築することです。導入の成功と実施のためには、データアーキテクチャにもデジタル技術の導入と同じだけの時間とリソースを集中させます。そうすることで、実を結びます。成功事例の1つとして、Google社の堅牢なGoogleマップのリソースが、結果として自動運転車の開発につながっていることが挙げられます。

製薬・化学業界の企業には、リソースにボトルネックを作らずにデータを最大限利用するための、バランスのとれたデータ管理戦略が必要です。一部の企業では、データ管理部門を創設しています。例えば、Novartis社では、専用部署を設立し、アーキテクチャ・データフロー・オントロジー(データのアノテーション・分類・変換の確認)や、データライフサイクル管理に集中的に取り組んでいます。重要なのは、柔軟なデータの収集と、それにあわせた柔軟なストレージの用意です。

新しい仕事の世界へ

デジタル化により業務・職務・企業文化が崩壊され、カルチャーシフトが起こる

デジタル化は、社会と文化の変化を促し、職場を常に変化させています。デジタル技術がますます職場に浸透するにつれて、一部の人は、すぐに否定的になったり不安を示すかもしれません。しかし、自動化される業務はたいていルーチンワークであるため、ワークフローの転換によって、最終的には空き時間ができ、エキスパートはより複雑で興味深い課題や問題に集中できるようになります。

その対極として、新技術が現れるたびに、それを追いかけたくなる企業もあるかもしれません。目新しさのためだけの導入は避け、自社のミッションから逆算してみましょう。その新しい技術が、企業の社会的使命にどのように役立つかを考えてみてください。

最後に、新型コロナウイルスのパンデミックにより、アジャイルワーキングの考え方が広まるなど、職場文化に変化が起きています。新型コロナウイルスのパンデミックは、人命へ非常に深刻な影響を及ぼしましたが、バーチャルイベントや柔軟な雇用方法など、以前はおそらく不可能であった、誰もが参加できる分散型ワークへのシフトをもたらしました。研究者とデジタル機器の向こう側の相手との間で、同じ議論に上下関係なく双方のスキルを持ち込めるようになり、ある意味、公平な競争の場が生まれました。

デジタル時代を先取りする

製薬・化学業界は、昔から高度なデータとテクノロジーの最前線にありましたが、今、かつてないほど新技術の開発に期待が集まっています。デジタルトランスフォーメーション時代は、研究開発のあらゆる面を再構築して、実際に科学を加速させています。これらの業界には、先頭に立って効果的なイノベーションを取り入れていく責任があるのです。